3.ライフラークとしての音楽、これからへの希望


 先生のライフワークとして福井室内管弦楽団を長く続けてきて、活動への想いとかありますか。


《福井室内管弦楽団 第1回演奏会 平成2年9月30日 県民会館にて》

 僕は音楽を教える事について、それほどできるものでもないけれども、僕には音楽しかない。
 音楽の好きな人が集まって楽しみ、そして生涯その人にとっての“生きる力”みたいな。
 そんな感じになればいいかなと思う。
 後は、アマチュアの音楽の集団というのは僕はすごく大事で、日本ほど吹奏楽でも合唱でも、こんなにアマチュアが凄い力を持っている国はない。
 日本のように全国にバンドや合唱団があって、人々が取り組んでいる様は、海外の人がみてびっくりする。


《福井室内管弦楽団による演奏 福井赤十字病院にて》

 ヨーロッパとかでは、オーケストラというのはプロの演奏家が取り組む範疇であって、一般の人はほんとにへたです。
 でもほんとに楽しんでやっている。
 日本の良い所でもあるけれど、かっちりまとまっている。
 もちろん楽しんではいるけれど、海外の人は、その楽しんでいる表情が体全体に出ているね。
 日本ももっともっと心から楽しめるようになればいいかな。

 音楽の好みって、だんだん細分化するでしょう。
 だから吹奏楽は吹奏楽、合唱は合唱でまとまってしまう。
 それが悪いというわけではないけど、ジャンルが多すぎるのは良い事でもあるのでそれ以上の口出しは出来ないんだけれど、もっと垣根を越えていろんな音楽を楽しんでほしい。
 弦楽四重奏とかピアノトリオ、声楽アンサンブルとかは作り易いけど、そういうものを取っ払って、楽譜もフレキシブルに、歌の伴奏はピアノばかりじゃなく、そこにバイオリンが入っても良いんじゃない。
 そういう音楽の楽しみ方の柔軟性、っていうのがもっとあって然るべきだと思う。
 やっぱり音楽というのは相手があって成り立つものだし。
 僕は一人でピアノ弾いていてもつまらないんです。二人でもいいからアンサンブルやると楽しい。
 音楽の原点はアンサンブルだと思う。


 最後に次の世代の方に伝えたいことや、想い等あれば。

 僕はどうしてもアマチュアに思い入れがあってね。
 プロを呼んできて質の高いものを提供するっていうのはいいのだけど、そうではなくて例えば合唱を募ってね、やさしい曲で良いからピアノ伴奏だけでなく、チェロ入れたり、バイオリン入れたりして、みんなの音楽会みたいなものをやるとか。
 質が高いというより参加する人が楽しめる音楽会があってもいいかな。

 僕が学生の頃はメサイヤっていうのがあって、寒い中コントラバスかついで教会に行って、10名ぐらいのコーラスと弦楽器とかで、わりと気さくにやろうとしていた。
 何々合唱団とかじゃなくて、今年は三国、来年は春江、みたいにミニ合唱団を募って、そういうアマチュアのお祭りみたいなものをやればいいかな。


 一つ良いですか?由起子夫人とのなれそめを教えてください。

 僕は音楽全般好きなんだけど、声変わりの時期に音楽の授業で歌の試験があって、みんなの前で歌わなきゃならなくなった。
 うまく声が出ないし、ピアノのキーに合わないし、その頃から歌には少しコンプレックスがあったのかな。
 歌が好きと目覚めたのは、高校時代にシューマンの歌曲を授業で習った時、なんて歌って素敵なんやと思いました。
 大学に入ってから、音楽科の同学年の生徒が女の子が3人で、僕が1人男やった。
 一人はピアノ、一人は声楽、うちの家内が声楽でいた。


 大学の同級生だったんですか?(驚)

 まあそういう事やね。
 音楽科は1学年は4人が最大ぐらいで、少ない年は1人でした。
 坪田健夫先生が声楽やっていて、その頃トスティっていうので初めて歌曲の素晴らしさに目覚めた。
 ロマンティックで素晴らしかった。坪田先生の伴奏を務めて伴奏も好きになった。
 うちの家内も歌やってたので「僕が伴奏するよ」っていうのが最初かな(笑)


《令和3年現在 ご自宅での様子》


《福井室内管弦楽団定期演奏会 ハーモニーホール福井にて》

【2021.06.16 インタビュー】