第8回 さかい九頭竜音楽コンクール 審査結果
・10月3日 金賞受賞者(弦楽器・打楽器・管楽器・声楽部門)
・特別賞受賞者
審査員全体講評
審査員の皆様からの全体講評です。
ぜひ参加者の皆様はお目通し下さい。
泊真美子(ピアノ)
美しい大自然に囲まれ、悠然と佇む見事な会場で、とても愛らしい!小さなお子様から、腹を決め堂々たる演奏を聴かせて下さった生徒さん、学生、社会人の方までと、幅広い年齢層の方々の気持ちの通った演奏を聞かせて頂き、とても幸福な時間を過ごしました。
昨年から、世界中を震撼させたコロナウイルスの影響が長きに渡り、当たり前に出来ていた事が困難となった後に迎えられた「今日」へ、感謝が生まれる瞬間ともなり、関係者全ての方々へ改めて御礼申し上げます。
このコンクールでは、自由曲参加という所もまた魅力的で、様々な作品と演奏が並ぶ
その際に、私自身が自然と重要視しているポイントを上げさせて頂きます。
⓵歌心があるか?
⓶音楽に自主的な創造性があるか?
⓷作品の構成への理解と精神が宿るか?
⓸演奏者の個性、その人しか出せない世界観があるか?
作品の奥深さを知り、時間をかけ自分の肉体を通した上で、更に人の心へ訴えかけるという事は、そうそう容易いものではありませんが、ホールで演奏できるという喜びは、かけがえのない体験です。
音楽を自身が大いに楽しみ、その魅力を聴衆と分かち合いたいと強く念ずる思いこそが、日々の練習の原点となるのではないでしょうか。
無限の可能性を秘めた皆さんの未来を、心から応援しています。
上野 真(ピアノ)
美しい福井の大自然の中の素晴らしいホールで、幼稚園から一般までの幅広い年齢層の皆さんを聴く事は、大きな喜びでした。
芸術というものが、本来の姿から離れてしまいがちなこの時代、自分で弾いてみる、触れてみることよりも、ネットやテレビで受け身にただ見たり聞いたりするだけ、ということが増えています。
しかし皆さんは自分で実際に弾いてみること、それぞれが自分自身に合った曲を選び、ホールで演奏してみることを実践されました。
受賞したかどうかではなく、そこの点がとても意義のあることだと思います。
これからも自ら楽器を弾いてみること、より様々な楽譜を読んでみること、音楽に関する知識を深めること、より美しい演奏を目指すことに取り組んでいっていただきたいと思います。
小野隆太(ピアノ)
本日は本当に素晴らしい、沢山の心のこもった演奏を聞かせていただくことが出来ました。
コンクール開始当初は、朝から夕方までの長丁場を自分自身が集中して審査出来るのか心配でしたが、
全て自由曲ということもあり、飽きることなく聞かせていただきました。
どの演奏も日頃の練習の成果が遺憾なく発揮されており、手を抜いたと感じさせられる演奏は一つとしてなかったと思います。
今でも強烈に印象に残っている演奏がいくつも思い出されます。
それらの中でも私が特に一番印象に残ったのは、中学生部門でした。
一般的にはピアノをやめてしまうかどうかの瀬戸際の年代かと思われ、コンクールにおいても参加人数も少なく、少し荒れ気味の、レベル的にもあまり高くない演奏が散見されることが多いのですが、今回の演奏では、素晴らしいセンスと才能を持ち合わせている方、将来性豊かな方がとても多かったと思いました。
基礎の強化を忘れずに練習を積み重ね、一人でも多く継続してくださることを期待しています。
ピアノは、日々何時間もこもって作品と自分に向き合って練習しなければならない、自己愛的で孤独な楽器です。
心も複雑になりますし、思い通りに弾けなくて辛くなるときもあるでしょう。
しかし、練習を重ねて会得し、自分なりに仕上げたときの快感は、格別なものがあります。
きっと本日の多くの参加者の皆さんは、それを感じながら演奏されていたのではないでしょうか。
またいつかどこかで皆様の演奏を聞かせていただくことを楽しみにしております。
本日は、大変お疲れさまでした。
木田雅子(弦楽器/ヴァイオリン)
雲ひとつない青空のお天気になった10月3日
第8回のコンクール開催、そしてご盛会、本当におめでとうございます。
コロナ禍の開催で、事業団スタッフの皆さまも、大変なお気遣いをされたと思いますが、子供達から社会人の方までの熱演にご苦労が報われたと確信致しました。
コンテスタントの皆さま
心を込めて弾いてくださり、ありがとうございました!
受賞された方も、惜しくも選外の方も、一生懸命に弾いておられる演奏は、私達にたくさんの勇気や喜びを届けてくださいました。
音楽は、音に乗せて作曲家の思い、演奏者の思いを、届けるcommunicationの芸術です。
喜びも悲しみも心が動く幸せを届けてください。
そのためには、音程を整える、美しい音色をつくるなどのテクニックを磨くトレーニングと共に、たくさんの想いを経験して下さい。
そして音楽も、人としてもcommunicationできる素敵な大人になっていって下さい。
皆さまのますますの前進を心から期待しています!
ルドヴィート・カンタ(弦楽器/チェロ)
「さかい九頭竜音楽コンクール」の主催者の方々には、昨今の厳しい状況の中、このような素晴らしいコンクールを開催してくださったことに感謝いたします。
コンクールは終始素晴らしく運営されており、特に私が参加した弦楽部門は完璧な進行のもと行われていました。
このコンクールを通して、出場者は、自分の演奏の表現という点で沢山の努力をしていると感じ、中には驚くほど良い音を出している人もいました。
そして何よりも、非常に若い音楽家たちがとても難しい曲を準備していることに私はとても驚きました。
私が気づいた点として、特に若い音楽家にとっては、体をうまく使って演奏することでより良い演奏になるのではないかと感じました。
正しい弓の配置と、両手と両腕をリラックスさせてシンプルな動きを心がけることで、心地よい音質とより良いイントネーションを生み出すことに繋がります。
体をうまく使うことは、長い目で見ても、演奏における不必要な怪我を防いでくれます。
このコンクールで、若い音楽家たちの活力ある演奏を聴いて、本当に幸せな気持ちになりました!
この素晴らしく、重要な意味を持つコンクールが継続されることを願っています。
小林志穂(管楽器/フルート)
コロナ禍において関係者の方々、出演者の皆さんは、大変な状況下で本番に向けて準備を進められたことと思います。
まずそこに敬意を表します。
世の中では動画審査が増える中、こうして実際に演奏者の「息づかい」や「気」を肌身で感じることができて、対面審査の本質を見た気がします。
受賞者の多くに共通する点は、「楽譜どおりの演奏」を越えて、自分なりに楽譜にはない音楽的アイディアを創り出して積極的に表現していたことです。
アイディアを沢山持つには沢山の演奏を聴いて、他人から得るのも良いでしょう。
沢山の引き出しがあればあるほど色彩豊かな演奏になるに違いありません。
去年と2年連続審査させていただきましたが、大変レベルアップした印象でした。
このようなコンクールをとおして福井県の優秀な若い音楽家が益々増えていくことを祈っております。
豊永美恵(管楽器/クラリネット)
今年から「さかい九頭竜音楽コンクール」は、部門別審査へと拡大され、これまでの参加者数を遥かに超え、どの部門もレベルが上がったとのお話を伺い、地元出身者として大変嬉しく思っております。
審査させて頂いた管楽器部門では、どの年齢や楽器に於いても、自分が皆さんと同じ歳くらいの時とは比べられない程、レベルが非常に高い演奏を堂々と披露されていた事も嬉しい驚きでした。
昨年のようなコロナ渦で全ての活動を止め身動きが取れないと言った日々は過ぎ、今は限られた中でも手段を模索し前に進むと言った段階へ移行しつつあると思います。
今回参加された皆さんは、しっかりと前に進み続けており、それが音楽作りや自己表現の積極性へと現れていたように思います。
このコロナ渦は悪い事だけではありません。
想像し好奇心を掻き立て、理想を実現にするために自分の内面と向き合い考えることは、より作品を自分の「言葉・音」として伝える為にとても重要で、その時間を持つ事ができました。
また、生の音でしか伝えられない事や感動がある事も、私たちは充分に実感したと思います。
いい事も悪いことも、様々な感情全てが表現と個性へと繋がる大切な経験です。
今後再び平穏な日々が戻った際には、これらの貴重な経験を忘れる事なく、新たな音と出会うためにも、ぜひ前へ進み続けて下さい。
最後になりましたが、コンクール開催に向けてご尽力下さいました、関係者全ての皆様に感謝申し上げます。
今後もこのコンクールが、若い音楽家たちの憧れのステージとなりますよう、ハートピア春江の響きが多くの方々に愛されるよう”さかいのおんがく”が発展される事を心より願っております。
中谷 満(打楽器/ティンパニー)
昨年同様、コロナ感染拡大が未だ収束しない中でのコンクール開催、昨年に引き続き、参加させて頂きました。
まずは開催に向け準備して頂いた、関係各位に御礼申し上げます。
マリンバ・打楽器部門は今回は5人のマリンバ奏者の参加でした。
参加者全員、とても基礎がしっかりし、表情感も豊かな演奏でした。
特に重音(4声部も含め)時のトレモロが自然で素晴らしかったです。
益々、基礎力の充実を図り、マリンバとゆう楽器の特徴を把握し、音色、音型、音量の調整に工夫し、作曲家の音楽的意図を研究し、表現できるよう努めてください。
僕の大阪フィル時代の指揮者、故朝比奈隆先生の口癖は「演奏家は、一回でも多くステージに立ち続けながら成長するもんだ」との言葉でした。
今後も人前で演奏し、其々の課題を旨に頑張ってくださいね。
渡邉昭夫(打楽器/ティンパニー他)
今回、初めて審査させていただきました。
昨年に引き続き、コロナ禍中での練習や準備に相当苦労されたと思います。
そんな中、5人のマリンビストの皆さんのテクニック的に安定した、レベルの高い演奏に感心しました。
普段、練習されている場所はおそらく狭い空間だと思われますが、ホールのように天井も高く、広い空間での楽器の響かせ方=マレットの選択は必然的に変わってきます。
さらに、ピアノ伴奏が加わるとさらにバランス等も気にしなければなりません。
打楽器にはよくあることですが、ホールにおいて演奏している場所(ステージ上)と客席とでは楽器の響き方が違うことがよくあります。
このことを認識した上で、マレット選びをしないと奏者の意図した表現が伝わらなかったり、バランスが悪く聞こえてしまったり、と勿体無い事になってしまいます。
自分の音楽が本当に聞き手に伝わっているかどうか、選択したマレットで自分の出したい音が本当に出せているのか、を想像しながら日々の練習に励んでもらえたら、と思いました。
最後になりますが、今回の経験が次のステージに生かされ、レベルアップに繋げていただけたら、と思います。
小林史子(声楽/ソプラノ)
コンクール参加者の皆さま、熱のこもった演奏をありがとうございました。
皆様の演奏を聴いて言葉をとても丁寧に歌っている方が多かったように感じました。
歌唱において「言葉を大切に歌うこと」は、良いパフォーマンスのためにとても重要なことだと思います。
私自身も作品に取り組むときは、「言葉を大切に歌うこと」を心がけています。
素晴らしいホールの広い空間で演奏すると、いつもとは違った感覚を体験します。
しかしホールのいちばん後ろまで声を届けるために、言葉のテクニックはとても大切です。
皆さんは本番でレッスンや練習通りに歌えない、思うようにいかない、ということはありませんでしたか?
また反対に練習の時にできなかったことができたり、いつもと違う感覚に戸惑ったりしませんでしたか?
例えばオペラを歌うときは、役のキャラクターを表現するためにも発声のテクニックや演技力が必要なのですが、それよりも「言葉の表現」を駆使して、よりドラマに寄り添った演奏をすることが大切です。
実際に「言葉」は表現だけではなく、発声を変える力があるし、演技を作り上げたりする上でも大きなポイントになります。
そして何より「言葉を大切に歌うこと」は、ホールで歌う時に私達を大いに助けてくれます。
これはオペラだけでなく、歌曲でも同じだと私は思います。
今回の経験を活かして、皆さまがより成長され、またいつかどこかで演奏を聴かせていただく日が来たら嬉しく思います。
藤田卓也(声楽/テノール)
歌を歌うこと、これは身体が楽器である以上フィジカルなコンディションやメンタルの部分が大きく影響して仕上がりを変化させます。
このコロナ禍にあって、歌を歌うことは決して簡単なことではないということを私自身も思い知っています。
経験のない程、人は活動を制約させられています。自由を奪われているのです。
それはまるで、五線譜という紙の中に閉じ込められた音符が演奏者の力を借り空間に自由を求めて躍動するのを制約されているかのように。
現状の窮屈な生活は少なからず奏でる音楽にまで影響を及ぼすように思います。
しかし、今でこそ考えたいです。歌うということは何たるかを。
作品は宝物です。
その宝物を宝物として聴いてくださる方に届けましょう。
そうするために自分に何が必要なのか、事前にまたは歌っている最中に何をしなければならないか、自ずと見えてくるはずです。
そうしてどうぞ、歌を最高の気分で”伝えて”ください。
それが歌う者の使命です。