第11回さかい九頭竜音楽コンクールの審査結果はこちらのページにて発表いたします。
コンクール終了後、当日中の22:00までにPDFファイルにて掲載予定です。
各個人への講評メモ・賞状・副賞等は後日郵送いたします。

第11回 さかい九頭竜音楽コンクール 審査結果

10月5日 金賞受賞者(ピアノ部門)
特別賞受賞者

10月6日 金賞受賞者(打楽器・弦楽器・管楽器・声楽部門)
特別賞受賞者

審査員全体講評

審査員の皆様からの全体講評を頂きます。
コンクール開催終了後に頂いた順番に掲載いたしますので、是非ご覧ください(順次掲載)

田代慎之介(ピアノ)

 猛暑が続いた今年でしたが、10月5日は秋を感じさせる爽やかな気候でした。昨年に引き続き「さかい九頭竜音楽コンクール」ピアノ部門の審査にあたることが出来、充実した演奏を多く聴かせて頂いたことに心より感謝致します。
 小学生以下、中学生、高校生以上の各部門にそれぞれ多くの参加者が集い、美しく音響のよいハートピアホールに自由曲による熱演が続きました。皆さん実に個性豊かで、バロックから古典、ロマン、近現代、邦人作品と、あらゆる様式の曲目が幅広く弾かれていて楽しくもあり、逆に審査は大変難しいものでした。
 その中で今年は高校生以上の部門の充実が印象に残ります。これは取りも直さず11回目を迎えたコンクールが発展してきている証といえます。学び始めて間もない子供たちも積極的にステージ経験を積みながら成長していき、同じ場で本格的で高度なレパートリーが披露され、それに刺激されて(憧れて)再び挑戦してレヴェルアップしていく。それはコンクールが果たす最も価値ある役割だと思われます。
 演奏は奏者と聴衆とのコミュニケーションだと言えます。その為には、自然な呼吸をもって響きがメッセージとなって伝わらなければなりません。メッセージを送るためには、曲のことを深掘りして理解しておくことが大切であり、知ることで益々曲が好きになり、沢山の曲を好きになって音楽が自分と一体になっていく、そんな循環が皆さんの中で起こってくれるよう心より願っています。
 沢山の人に素晴らしい場を提供してくれている「さかい九頭竜音楽コンクール」の益々の発展をお祈り申し上げます。

鶴見 彩(ピアノ)

 第11回さかい九頭竜音楽コンクールの開催おめでとうございます。今回数年ぶりに審査させていただきましたが、レヴェルの高い演奏に聴き入りました。
 小学生以下の特に小さい方たちは、まだ習い初めて間もないのに、きちんとした学びの上に、とても音楽的で伸びやかで素直な演奏をされていました。ご本人の個性や努力はもちろん、先生方のご指導、ご家族のサポートがあってこそだと思います。未来は明るく、楽しみだと頼もしく感じました。
 中学生以上になると、演奏する曲の規模が大きくなり、充実した演奏をたくさん聴かせいただきました。ただ、曲が立派になるとピアノの場合格段に音数が増えるので、客観的に自分の音をよく聴いて整理すること、曲を構築することを意識されると、聞き手によりしっかり音楽を伝えられると思います。
 今回準備して舞台で演奏したことで、多くのことを得られたのではないでしょうか。皆様がこの経験を次に生かし勉強を重ね益々成長されますことを願い、また聴かせていただけることを楽しみにしております。

木次谷紀子(打楽器)

 第11回さかい九頭竜音楽コンクールの開催、おめでとうございます。清々しい秋空の下、美しいホールに到着した時、これから始まるコンクールに期待が膨らみました。
 今回の打楽器の参加者の皆さまは、落ち着いて着実な演奏をされていて、普段からの丁寧な練習が根付いている様子が伺えて感心、感動致しました。これからも是非楽しみながらレパートリーを増やしていって頂きたいです。
 自分の目の前の技術、音楽のみに精一杯になりすぎず、ホールの空間や響きを感じ、聴いてくださる方に音楽を届ける意識を持って演奏するためには、やはり自分の演奏に余裕を持ち、視野を広げる必要があると感じます。
 日頃からの地道な基礎練習&反復練習、タッチや音色の研究はもちろんの事、様々なジャンルのコンサートに行って素敵な音楽を聴いたり、色々なところに行って美しいものをたくさん見たり、他にも多くの経験を積んで自身を豊かにし、音楽表現の引き出しを多く持てると良いと思います。
 打楽器は叩いて音を出す楽器ですが、ただ叩き付けてしまわずに、是非音楽の引き出しからその一瞬一瞬に相応しい音色を取り出し、一粒一粒の音の響きを感じながら”弾く・奏でる”事を大切に取り組んでいただきたいと思います。
 ストロークを準備するタイミング、振り下ろすスピードや重さを、出したい音色のイメージに合わせて是非研究してみてください。そして打楽器の可能性をこれからもっと広げていきましょう!
 この素晴らしいホールでの演奏経験も糧に、皆さまのさらなる飛躍を楽しみにしております。
 お世話になりました関係者の皆様には心より感謝申し上げます。さかい九頭竜音楽コンクールのさらなるご発展をお祈り申し上げます。

加納三栄子(打楽器)

 第11回さかい九頭竜音楽コンクールのご開催、おめでとうございました。
 今年も参加者の皆さまの演奏を拝聴できることを大変心待ちにしておりました。
 2年前に初めて会場を訪れた際、目の前に広がる開放感溢れた広場・気持ちの良い秋晴れの空の下美しく輝くステンドグラスに魅了されしばらくの間魅入っていたことをよく覚えております。今年の参加者の皆さまもその素晴らしい景色を観て清々しく前向きな気持ちで本番の演奏に向かえたのではないかなと思います。
 今年は5名のマリンバの演奏を聴かせていただきました。大きなホールで一人で演奏するのはとても緊張すると思いますが、全員が堂々とされていて本当に立派でした。どの方もコンクールに向けて真摯に取り組んできたことが良く伝わる安定した丁寧な演奏をされていたのが印象的でした。また、譜面通りに音を並べるだけではなく音色や音楽にそれぞれの意志を感じられる素敵な演奏でしたね。
 マリンバは鍵盤楽器と打楽器両方の要素を持っているとても魅力的で面白い楽器だと思います。
 現在主流となっている5オクターブマリンバが定番になってからはまだ歴史が浅い楽器なので、毎年どんどん新曲が出てきており、複雑なリズムやテクニック的にも難しい曲が増えています。もちろん演奏するのにテクニックの上達は欠かせないですが、テクニックに捉われて必死になり音楽ができていないと感じる場面に遭遇することがあります。
 私が演奏するときに心がけている一つに、歌を歌うようにマリンバを弾くという事があります。
 歌うときは自然にブレスをとってワンフレーズで吐き切るという事をしていると思いますが、マリンバになると手先だけになりがちですね。私もよくやりますが、実際にそのフレーズを歌ってみる、できれば一緒に歌いながら弾いてみてそのブレスの深さや吐き切るスピード感の変化などを確認すると分かりやすいですし、和性の感じ方や跳躍するときのエネルギーなども同じ事が言えると思います。
 あと、どこをどんな音で弾きたいか?テクニックの部分でもあるマレットの運びや身体の使い方、タッチの仕方に加え、音の形や大きさ、色など。。色々イメージを持って多彩な音色で自分の音楽の表現の幅が広がると益々楽しくなりますね。
 コンクールは順位や賞がつきますが、それだけではなくそれまでの過程がとても大切だと感じております。
 高い志を持ってチャレンジした事が自信に繋がり、その自信や経験がまた次へのステップに繋がっていきます。
 今回チャレンジした皆さん、それぞれ手応えを感じて自信を持って次に向かわれていることと思いますし、それは音楽だけでなく色々な場面で発揮されていくと信じています。
 美味しいものを食べる、美しい景色を観るなど、心ときめくものに触れたり、自分の感情に耳を傾けるなど、日常の些細なことから音楽の感性も磨かれると思います。
 これからも色々なことに挑戦して豊かな音楽、人生になることを応援しております。
 また皆様の音楽を聴かせていただけることを楽しみにしていますね♪
 最後になりましたが、温かいコンクールの雰囲気にスムーズな運営、細部までお心配りいただいたスタッフの皆さま本当にありがとうございました。
 この素晴らしいコンクールが益々発展して続いていくことを願っております。

ルドヴィート・カンタ(弦楽器)

 今年も再び「さかい九頭竜音楽コンクール」の審査を担当させていただき嬉しく思いました。
 例年通り、演奏は技術的にも音楽的にも非常に高いレベルでした。特に、コントラバス奏者2名の演奏の技術的な優秀さと音楽性には感銘を受けました。
 ボッテジーニの作品を演奏した、最優秀賞を受賞した奏者は、卓越した技術、素晴らしい音色、そして正確な音程だけでなく、彼が見せた情熱と音楽性が私の目を引きました。彼はまるでイタリア人歌手がイタリア の旋律を歌うかのように、コントラバスで歌い上げました。そして、その演奏から彼自身が楽しんでいる様子が、私たちにもはっきりと分かりました。
 もう一人のコントラバス奏者も素晴らしい演奏を披露しました。フラジオレットや一部のパッセージで技術的なミスが見られましたが、それ以外は優れた演奏でした。しかしながら、より豊かなダイナミクスやコントラストを工夫し、繰り返されるパッセージにエコー効果を加えるなど、より多くの想像力と創意工夫を盛り込む余地があると感じました。そのため、素晴らしい音色と技術で演奏しているにもかかわらず、最終的には少し単調な印象となってしまいました。なお、自分の順番の直前に同僚のピアニストのために、譜めくりの役をかってでた勇気とスポーツマンシップには賞賛を送りたいです!
Zajicの曲を演奏した若い女性も、将来有望な才能を見せてくれました。彼女の技術と音楽性はまだ発展段階ですが、素晴らしく将来が楽しみな演奏でした。
 審査はスムーズに進み、入賞者もすぐに決まりました。
 最後に、全参加者と、この素晴らしい大会を開催してくださった主催者の皆様に心からの祝福をお送りいたします。

清水里佳子(弦楽器)

 澄み渡った秋空の日曜に弦楽器部門は開催されました。
 今回、様々な楽器、様々な年齢の参加者に恵まれました。
 その全ての参加者が、大変熱の入った、聴き応えのある演奏をしてくれました。
 惜しくも受賞を逃した方も、落ち込む事なく、あの会場で圧巻のパフォーマンスをした事を誇りに思ってください。
 その中で、音楽的に魅力的なパフォーマンスをしてくれた演奏に注目させて頂きました。
 大学生の皆さんは曲の構造にもっと理解を深め、積み上げた技術というアイテムで、どのように表現したら良いかを追求していくと、もっと素晴らしいパフォーマンスになると思います。
 小学生の皆さんは、これから更に多くの曲と出会い、たくさん舞台に立つことをお勧めします。
 最後になってしまいましたが、このコンクールの開催に尽力下さった、運営の皆様に感謝申し上げます。
 参加の皆さんが、ストレス無く演奏出来たのは、運営の皆様の準備や当日の気遣いがあったから、ということを忘れないようにして下さいね。
 また、皆さんの演奏を聴かせて頂くのを楽しみにしています。

若林かをり(管楽器)

 汗ばむほど心地よい秋晴れに恵まれた一日。コンクール第2日目に開催された管打楽器部門の審査では、今回も沢山のフレッシュな演奏を聴かせていただきました。
 今年は、棄権者が複数いらしたこともあり、管打楽器部門の参加者としては、例年よりも出場者が少なかった印象でした。
 全体の印象としては、大きなミスをする方がいらっしゃらなかったこと…これは、十分に準備してコンクールに臨まれたことの裏付けだと思いますし、素晴らしいことです!同時に、少し残念だったのは、連符やアルペジオの表現が、「エチュード(練習)」で終わってしまっているように感じられたことが多かったことです。連符やアルペジオは、確かに難しいテクニックですが、それは曲にとってどのような表現のために用いられているのか、複雑な連符の中で和声はどのように変化しているの?その素敵な和声の変化を、お客さんに届けるためにはどんな風に演奏したら伝わるの?という「表現する」ところまで、持っていく練習を是非してみてください。
 また、ホールの大きさに沿った音と表現力で演奏することも大事です。自分がどのくらいの大きさの空間で、どれくらいの人数のお客さんの前で、もしくは、どのくらい離れた距離の聴き手に向けて演奏するかを考えながら、演奏してみましょう。隣の人と会話するとき/学校の授業の中で何か発表するとき/20メートル以上離れた場所にいる誰かを呼び止めるときでは、それぞれ発声が異なるように、演奏表現においても、音量や表現力の抑揚を変える必要があります。小さなサロンで演奏する時と、100名程度のホールと、このコンクールのような大きなホールでは、必然的に、使う息の量や、表現の大袈裟度数が変わってくるでしょう。
 理想的には、演奏している最中に、自分の分身が客席にいて、「もっとタンギングをはっきり吹いた方がいいかなぁ。」とか、「いやいや、ここだとフォルテはいつも以上に出さなきゃ聴こえないよ!」とか感じられたらいいのですが、残念ながら、現実でそんなことはできません。舞台上で、ホールの音響を感じて、客席に届いている音を想像しながら、ダイナミクスや表現の抑揚を調整して演奏する必要があります。また、ダイナミクスの音色が単一にならないように、注意してください。たとえば、同じ〈ff〉でも、強い音/厳しい音/広がりのある音…などイメージをもう一歩具体化するだけで、奏でられる音のパレットが拡がると思いますし、そのような多様な音は演奏表現を立体的にしてくれると思います。
 普段からこのようなことを意識しながら練習すると、自分の演奏を客観的に感じる意味でも良いトレーニングになると思いますので試してみてください。
 今年もコンクールの審査員としてコンクールに関わらせていただけましたこと、嬉しく光栄に思います。
 長年にわたり沢山の若い才能を見出してこられた「さかい九頭龍音楽コンクール」の、ますますの発展をお祈りいたしております。

宗貞啓二(管楽器)

 今回初めてさかい九頭竜音楽コンクールの管楽器部門の審査員をさせていただきました。
素晴らしいホールで開催されたこのコンクールの参加者には年齢をや居住地の制限が無いことにまず驚かされましたが、参加者のレベルが私の予想を遥かに超える高レベルであったことにもっと驚かされました。
 こんな素晴らしい企画が今回は11回である事。私は福井出身であるにもかかわらずこのコンクールの存在を今日まで知らなかったことを大きく恥じると共に、主催者の方々のご尽力、ご苦労に頭が下がる思いと共に最後まで聴かせていただきました。
 今回の管楽器部門の参加者は、(過去には参加者の楽器の種類も多くあったようですが)フルート、サクソフォーン、トロンボーンだけであり少々寂しい気も致しました。しかし楽器ごとの専門性が強いこの部門で、審査員の専門とその人数を考えれば、これは致し方ないことと思えました。
 今回私は審査をするにあたり、参加者の年齢差を考えると楽曲のレベルに大きな差があるのは当然のこと考え、奏者の演奏技術が伴っているかは当然大事なことですが、楽譜からどのように音楽を感じているか、またそれが自分の音楽として消化されているか、音楽芸術としてのアピール力が伝わってくるか、などをメインに聴かせていただきました。
 コンクールはフルートから始まり、サクソフォーン、トロンボーンの順に年齢順に演奏されたようです。しかし始まってみると年齢順に演奏していることを忘れさせるような各奏者共に美しい音色と安定した技術の演奏が続き、参加者のレベルの高さを実感すると共に素晴らしいコンサートに来ているような錯覚を覚えました。
 しかしながら音楽のアピール力や表現力の有無に視点を変えてみると見ると、各奏者間にはその差が大きく存在し、聴き終わってみると全体的に少々物足りなさを感じることになりました。
 こうしなければいけないとか、これをやってはいけないとか、先生から教わった「何々しなければならない」事だけを正しく演奏している奏者が多かったようにも思えました。
 演奏する側は楽譜を正しく正確に消化し努力することは当たり前の事ですが、この楽曲から受ける印象やイメージ、感情、表情などを自分の演奏で聴衆に伝え、また聴衆に感じてもらえるようにパフォーマンスすることも同じように重要なことだと思います。これからはテクニックだけでは無く、表現力、アピール力の向上を目指した努力も忘れないで、よりハイレベルな音楽表現ができるよう精進し、努力を重ねられることをご助言申し上げます。勿論クラシック音楽の場合は何をやっても許される訳ではありませんが…。
 先日のコンクールに限らず国内の音楽コンクールを聴いて感じることですが、日本人の楽器の演奏技術の高さは確かに目を見張るものがあります。しかしながら音楽の表現力、アピール力に関しては諸外国のそれに比べ少々弱さを持っているようにも思えます。人間の喜怒哀楽を体や言葉で日常的に大きく表現する諸外国の人たちに比べると、大人しさやお淑やかさを美徳とする日本人の国民性との違いだけだとは考えたく無いのですが…。
 私の時代とは異なり芸術的な情報や環境はすぐ近くに存在いたします。貪欲に吸収した皆さんが大きく進化し日本で、いや世界で活躍する奏者になられることをご期待申し上げます。

小林史子(声楽)

 第11回さかい九頭龍音楽コンクールの開催、おめでとうございます。暑かった夏が終わり、ようやく涼しい風を感じられる季節となりました。素晴らしいお天気の中で、皆さんの心のこもった演奏を聴かせていただき、とても嬉しく思いました。
 今回の参加者は、小学生以下が7名、中学生が2名、高校生が6名、大学・大学院生および専門学生が3名という構成で、聴きごたえのある演奏を楽しませていただきました。このコンクールを通して私が感じたことは、「歌うって素晴らしい」「声とはなんと素晴らしい楽器なのか」ということでした。
 声を磨くことは、現在の自分の声を活かして歌うのはもちろんですが、将来どんな演奏を目指すかという方向性が非常に大切だと思います。声は取り替えのきかない、一生にたった一つの楽器です。そして声は、年齢とともに変化します。
 歌うことが楽しくて仕方がない時期や、体の成長とともに思うように歌えず悩む時期、素晴らしい作品に出会ってドキドキする時期など、様々な感情があるでしょう。うまくいかない時には、失敗してもよいのです。その経験からさまざまな気づきを得ることができるのです。さらに、作品との出会いから予想もしなかったインスピレーションを得ることもあります。その際に大切なのが、方向性です。
 それぞれの指導の先生方のアドヴァイスをよく聞いて、楽器(声)を大切に育てていっていただきたいと思います。中学生までの方々は、体の可能性や声のメカニズムなどを丁寧に学んでください。高校生以上の方々は、それに加えてイタリア語、ドイツ語、フランス語などの言葉の表現方法やフレージング、作品の理解などを、どちらもワクワクしながら楽しみながら学んでほしいと思います。そして、成長した新しい演奏を聴かせていただければ、これほどの幸せはありません。
 それぞれの方々への具体的な感想は、紙に書いて係りの方にお渡ししました。細やかなサポートをしてくださったコンクール関係者の皆様に心より感謝申し上げます。さかい九頭龍音楽コンクールのますますの発展をお祈り申し上げます。

石橋栄実(声楽)

 2014年第一回さかい九頭竜音楽コンクールで審査をさせていただき、この度10年ぶりに伺いました。ホール横の芝の緑と青空が鮮やかな、本当に気持ちいい秋晴れの日でした。
 声楽部門ご参加の皆さまには、素晴らしい演奏をお聴かせいただき、ありがとうございました。小学生以下の皆さんの清々しい歌声は真っ直ぐクリアに届き、中学生になると声に色合いが増して音楽も豊かになり、高校生の演奏からは本格的な声楽のレッスンを受けて発声と発音を丁寧に勉強されていることが感じられ、大学生以上の皆さんはご自身の強みをしっかり理解をした上で表現なさっていました。色んな年代の方の歌声を一気に聞かせていただいて、わたし自身「声」という楽器の魅力を改めて感じる一日となりました。
 「声」は言うまでもなく、この世にたった一つの自分だけの楽器で、年齢と共に進化していくという点でも特別な楽器です。体の成長だけでなく、正しい発声で技術を磨いていくことによって、楽器そのものが育っていきます。つまり声が大きく変わっていく年齢では一時期、扱うことが難しくなる一面もあります。誤った練習方法や無理な選曲をしてしまうと、潰してしまう危険もありますが、今回参加された皆さんは、それぞれに声の成長段階やご自身の声のタイプに合う曲でチャレンジなさっていて、それが本当に素晴らしいことだと感じました。
 声そのものを育てることと同様に皆さんに常に大切にしていていただきたいのは「ブレス」です。ブレスの重要性は理解しているつもりでも、実際に歌うと、ついつい声だけに意識が行きがちです。その場その場に最適な安定したブレスが出来るようになれば、次に続く一声目の充実度も、フレーズ全体の説得力もグッと増しますし、言葉を扱う声楽においては、ブレスに感情を乗せることも重要です。「どんなテンポの曲でも、どんな拍子でも、どんな高さの音からスタートする曲でも、全て同じブレスになっていないかな?」「表情のない、ただの息継ぎになっていないかな?」「吸ったとき、歌い出したとき、体がどのように働いているのかな」と、まずは一度ご自身の呼吸に注目してみてください。ブレスの種類が増えれば増えるほど演奏表現も豊かになります。楽しみながら色々と研究していただけると嬉しいです。
 この度のコンクールに向けての素晴らしい努力に心からの拍手を送らせていただきますと共に、今後ますますのご活躍を応援しております。