第12回さかい九頭竜音楽コンクールの審査結果はこちらのページにて発表いたします。
コンクール終了後、当日中の22:00までにPDFファイルにて掲載予定です。
各個人への講評メモ・賞状・副賞等は後日郵送いたします。

第12回 さかい九頭竜音楽コンクール 審査結果

10月4日 金賞受賞者(ピアノ部門)
特別賞受賞者

10月5日 金賞受賞者(管楽器・声楽部門)
特別賞受賞者

審査員全体講評

審査員の皆様からの全体講評を頂きます。
コンクール開催終了後に頂いた順番に掲載いたしますので、是非ご覧ください(順次掲載)

田代慎之介(ピアノ)

 厳しかった猛暑も去り、10月4日は雨の中でのピアノ部門の開催となりました。就学前の方から大学生まで、50名近い応募者の皆さんが自由曲を伸びやかに、個性豊かに披露されるのを審査員として聴くことは、大きな喜びでした。
 毎回感じることですが、ハートピア春江の大ホールは響きがとても良く、そこのフルコンサートピアノをまだ体も手も小さな参加者の方々も含め、皆さんが美しく響かせているのは、立派という一言に尽きます。
 今回の特色としては、幅広い年齢層の方に良い演奏があったことかと思われます。就学前、小学生の方々がシンプルな曲でも曲想に合った豊かな表現をしていたことに感心しましたし、小学生ながら高難度の曲を楽々と弾き切ったことには驚きも覚えました。中、高、大学生の方々はそれぞれがもつ音楽性を大切にして、ひたむきに演奏していることに共感を持ちました。
 その中で嬉しい思いで気付いたことは、皆さんペダルが巧みだということです。ペダルは楽譜の中で踏み替える場所を決めておいただけでは、濁ってしまうことが多いものです。自分の音をよく聞いて対処しなければなりません。それをステージ上で実現できるのは、普段のレッスンの時からよく注意がなされている証ですし、これまで積極的にステージ経験を重ねているからに違いありません。
 さかい九頭竜音楽コンクールが、今後も若い才能が発揮される貴重な場であり続けることを心より願い、益々の発展をお祈り申し上げます。

鶴見 彩(ピアノ)

 今年も素敵な演奏をたくさん聴かせていただきました。丁寧に準備を重ね、ひたむきで集中力のある演奏に惹き込まれ、あっという間に時間が過ぎました。年齢も曲もさまざまで、審査は難しかったのですが、それぞれの年齢やレヴェルにあった選曲で、どの演奏も内容豊かで素晴らしかったです。もっと多くの方に賞を差し上げたいと思うほど、充実していました。
 細かいことは講評に書きましたが、とてもよく弾けているのに、フレーズの形が見えず、不明瞭になってしまう演奏は少しもったいないと感じました。聴く人にわかりやすく伝えるという意識を持てると、さらに魅力的な演奏になると思います。
 ホールで演奏することは貴重な経験であり、大きな成長につながります。うまくいったこと、思うようにできなかったこと、様々に感じていると思いますが、今回得たことを是非次に生かし、これからも挑戦を続けてほしいです。
 さかい九頭竜音楽コンクールの更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。

髙橋聖純(管楽器)

宗貞啓二(管楽器)

 昨年に引き続き、今年度も「第12回さかい九頭竜音楽コンクール」管楽器部門の審査員を務めさせていただきました。
 今年も小学生から一般の方まで、幅広い世代の方々が参加され、フルート、クラリネット、サクソフォーン、トロンボーンによる、ピアノ伴奏付きまたは無伴奏のソロ演奏が披露されました。それぞれに個性と魅力のある、聴きごたえのある演奏が揃い、審査員として大変嬉しく聴かせていただきました。
 今年は昨年には見られなかったクラリネットの参加があり、新たな広がりを感じる一方で、それ以外の管楽器の参加が見られなかった点は、やはり少し寂しくもありました。今後さらに多様な楽器による参加が増え、このコンクールが一層豊かな音楽の場となることを期待しています。
 今回のコンクールを通して感じたのは、息の使い方など基礎的なテクニックが非常に安定しており、昨年同様、参加者全体の演奏レベルが非常に高かったということです。特に、まだ体が十分にできあがっていない小学生や中学生の参加者においても、音の出し方や姿勢、フレーズの捉え方にしっかりとした基盤が感じられ、日々の練習の積み重ねが伝わってきました。
一方で、多くの演奏に共通して見られたのは、楽譜の再現に重点を置くあまり、自身の音楽的な表現にまで意識が及んでいない点です。譜面に忠実であることは演奏の基本であり、大前提ではありますが、「自分の音で何を伝えたいのか」という意識を持ち、それを演奏に反映させていくことが、これからさらに求められる段階に来ていると感じました。
 音楽演奏は、技術と表現が揃ってこそ、人の心に届くものだと思っています。日本の管楽器奏者のレベルをさらに高めていくためには、演奏者自身はもちろん、指導者もまた、単なる音の正確さだけでなく、表現力を育む指導法や環境づくりを意識していく必要があると、改めて実感いたしました。これは私自身への課題でもあります。
 本日ご参加いただいた皆さんが、この経験を糧に、さらに高度の技術を習得し、豊かな音楽表現を目指して成長され、やがて世界に羽ばたいていかれることを、心より願っております。

田中 勉(声楽)

この度は素晴らしい響きを持つホールで、皆さんの演奏を聴くことができ、大変嬉しく思いました。
特に、小学生といった若い世代からの応募があったことには驚きましたが、その実力の高さや、ステージ上でのマナーの良さに感心いたしました。
 男声の皆さんにとって、ちょうど声変わりの時期にあたる年代では、声を守るために移調を行うこともあると思います。その際は、調の選択によって曲全体の雰囲気が暗くならないよう、慎重に設定することも大切だと感じました。
 また、制限時間の使い方も一つのテクニックとして意識すると良いでしょう。曲順の工夫も、ステージ全体の印象を左右する大切な要素です。
 何より、声をホールいっぱいに響かせるためには、まず「口をしっかり開ける」ことが基本です。せっかく美しい声を持っていても、響きが口の中にこもってしまうのは惜しいと感じました。
 どの世代の方にとっても、「声」というものは、ある日突然響きのポイントが分かる瞬間が訪れることがあります。ぜひ今後も、「自分の声をいかに遠くまで、より豊かに届けるか」というテーマを追求し続けてください。皆さんの今後の成長を楽しみにしております。

吉田珠代(声楽)

 さかい九頭竜音楽コンクールに向けての皆さんの頑張りと本番での素敵な演奏の数々、おめでとうございました。また先生方の心を尽くした日々のご指導に感謝申し上げます。
 参加者の皆様おかれましては、県内からはもちろん、県外からの応募も沢山あったこと、そして福井には音楽を専門に勉強できる音楽科というものがなくなってしまった今、こんなにも歌を楽しんでくれている人たちがいるのだなと嬉しい気持ちで一杯になりました。
 今回は特に中学生までの皆さんの演奏の中から、癖のないまっすぐな声と、素直に発語された日本語から奏でられた素晴らしい演奏が沢山聴けました。皆さんにはこのまま真っ直ぐに、男の子に関しては変声期時に決して無理をせず、楽しく歌を歌い続けて頂きたいと思います。
 年齢が上がってくるとともに選曲の難易度も上がり、外国語歌唱は当たり前、音域がぐーんと広がった曲や、アジリタ(コロコロ音が転がるもの)やレガートなどの高度な技術的要素が求められる曲が多く聞かれ、さすが声楽を専門に勉強している声が聴こえるようになり、私もより一層耳を研ぎ澄まして審査をさせて頂きました。
 歌というのは、書かれた情景や人物の気持ちを音と言葉を同時に紡ぐことで作品としてお客様に届ける、そしてあらゆる音域の音に込められた感情を確実に表現するために、その手段である『声』のテクニックを磨かなければいけません。
 日本人である私達は声を作る時にどうしても、録音された物でよく耳にする外国人歌手の奥行きのある豊かな「響き」を先に作ることを追い求めがちですが、まずは言葉を話す時の声帯の使い方と位置で発語することを習得していただきたいです。この正しい位置でテキストを発語することこそが、響きのある声を生むスタート地点だというロジックを正しく認識していただきたいと思います。
 それに加えて、発語したものを確実に「歌」という形にするためには、音階での発声練習も必須です。低音から高音まで明るく正しい母音で、全ての音に支えられた息を通して滑らかに音を紡ぐ練習です。私はイタリアの先生の方法を今でも実践していて、必ず狭い母音であるイとエで前に明るく母音を紡いでから、アやオの広い母音に応用していきます。これは日本語の五十音の順番である「アイウエオ」の概念では獲得できない方法で、欧米では「イエアオウ」の順番で一本のラインのように声を作っていきます。その声に正しく発語した言葉を乗せて、ようやく歌になり始めます。
 もう一つ大切なのは外国語の理解です。楽譜に対訳を書いただけでは、原語の直訳と対訳とに言葉の並びのズレが出てきます。実際、今歌っている瞬間の言葉やセンテンスの意味が、対訳によって捉え違えたまま歌っているのでは正しい表現の瞬間になりません。単語の意味を調べる事は当然として、その原語の文法をある程度網羅し、自分でテキストを語順通りに直訳できることはとても大切です。
 今お話した発語、発声、外国語の理解、この3つの勉強が正しくできていれば、明瞭な言葉捌きと客席の奥まで届く豊かな声で、その音楽の表現すべき情景やキャラクターがお客様にはっきりと伝わると確信しています。そしてそれこそが、プロアマ問わず歌を歌う人達が目指すべきところであり、そこに向かって努力する事は作曲家や作品への敬意でもあると思うのです。
 歌の世界に足を踏み入れた皆さんの音楽人生が、正しい勉強の暁に花開く素晴らしいものになるよう、心からお祈りしています。