第9回さかい九頭竜音楽コンクールの審査結果は、コンクール当日中に本ページ内で発表いたします。

第9回 さかい九頭竜音楽コンクール 審査結果

10月1日 金賞受賞者(ピアノ部門)
特別賞受賞者

10月2日 金賞受賞者(弦楽器・打楽器・管楽器・声楽部門)
特別賞受賞者

審査員全体講評

審査員の皆様からの全体講評をを頂きました。
ぜひ参加者の皆様はお目通し下さい。

泊真美子(ピアノ)

 今年もまた、第9回さかい九頭竜音楽コンクールが無事に開催されました事を、そして、演奏を聴かせて下さった出場者の皆さん、企画関係者の皆様へ心からの感謝を込めここに御礼申し上げます。

 年齢や学年によって、特に小学校高学年から中学生以降になってくると、成長過程特有の心身の大きな変化や、学校の行事なども増え、その時代その時期においてのピアノとの関わり方がどんどん変わって行きます。
併せて、出会う作品のスケールは更に大きくなってくるので、取り組む重さも当然 異なって来ます。

 幅広い年齢層における演奏には、各々の世代の魅力があり、同等に点数をつけていく事は少々難しく思えますが、小学生までの皆さんには「大いに楽しくのびのびと!」
中学高校の皆さんには「諦めず、今こそ踏ん張れ!」そして大学生以降の皆さんには「ここまでよくやった!」と叫びたかったです。
そして(私自身も含め)参加された全員に「80歳を過ぎてもピアノを弾いていて欲しい」と思い、どんなピアニストであるのかは別としても、芸術・文化への敬意と共に積み重ね、いつの日か ピアノが、自己の解放や慰さめとなる存在になってくれたらと強く願います。

 土や木々のいい香り。果てしなく広いこの青空。最高です!
この地は、なんと気持ち良く、想像力の掻き立てられる環境なのでしょう?
普段、忙しない東京で過ごす私は、春江町の風景に憧憬の念を抱きながら帰路につきました。
これからも、皆様の益々のご活躍と、さかい九頭竜音楽コンクールのご発展を心よりお祈り申し上げます。

上野 真(ピアノ)

 福井県の美しい海と山、深い歴史に彩られた坂井市の素晴らしいホールで、幼稚園の子供さんから大学の学生さんまでの、多様なピアノを聴かせて頂きました。
長い間ご準備下さったホールのスタッフの皆様に敬意を表します。

 受賞された方も、そうでない方も、音楽という不可思議な、言葉ではなかなか全てを語ることができないものを大切にされている事、そしてピアノというマスターするのに時間がかかる楽器を慈しんで弾いておられる事がよくわかりました。

 望みたいのは、今後も長い時間をかけて、文字通り、音を楽しんでいっていただきたいということです。
又それぞれのやり方で良いですので、ピアノだけでない、オーケストラや室内楽、歌曲などを楽しめる環境を作っていくこと、そして少しでも「楽譜を読める」ようにしていくこと、より味わい深い美しい演奏とは、どのようになされるのかを探求していってほしいと思います。

 ピアノという楽器は総合的な楽器で、ひとまず音を出すのは簡単ですが、ある程度のレベルの作品を、聴くに値する演奏にするには、様々な知識や技術が必要な、奥の深い楽器です。

 それぞれの音楽性を育まれ、成長していってくださることを心から期待しています。

小野隆太(ピアノ)

 気持ちの良い秋晴れの日に、心のこもった数々の演奏を聴かせていただき、誠にありがとうございました。
昨年も審査を担当させていただきましたが、非常にレベルの高いコンクールであったことを覚えております。
そして本年も、たくさんのすばらしい表現力と技術、個性に触れることが出来ました。

 大人でも難しい深い表現をよく勉強していて、年齢やキャリアなりに、精一杯努力していると言うことを強く感じました。
そして何よりセンスのある方がとても多かったです。
昨年に引き続き、特に中学生のレベルは高かったと思いました。
こうして若い演奏家たちが、緊張したり失敗したり、泣き笑いしながら、生で披露している姿を見て、毎回ホッとしています。
それはAIが人間の様々な仕事をどんどん奪っていく時代になっているからです。
いつか演奏家の仕事も奪われてしまうのでしょうか。
また最近は映画やドラマなどを、ストーリーがわかれば良いという理由で、倍速で見ることもあると聞きました。
俳優さんの心のこもった演技はじっくり見てもらえないのです。音楽も同じかと思います。
例えば今回の皆さんの演奏も、録音倍速で聴かれたら悲しいと思います。
音楽のアウトラインだけを知るだけなら、機械で倍速も良いのかもしれません。
しかし、演奏家それぞれの心のこもった音楽は、倍速で聴けるものではありません。
だから、音楽には多くの演奏家が必要ですし、ライブ演奏は大切なのだと思います。
演奏家の仕事、役割とは何なのかを、毎回考えさせられます。

 どうぞこれからも音楽を愛し、是非とも皆さんの自らの手で継承していってください。
本日は本当にお疲れさまでした。

木田雅子(弦楽器/ヴァイオリン)

素晴らしい秋晴れの雲ひとつない青空が広がった10月2日。

皆様の、心のこもった温かい演奏を聴かせて頂き、幸せな気持ちになれました。

コンクールにむけて、頑張ってこられた演奏者の皆様、支えておられたご家族とご指導の先生方、開催にむけて、細やかな準備を、して頂きましたコンクール事務局のスタッフの皆様、心から感謝申し上げます。

私もバイオリンと向かい合う時にまず、音程に苦労します。

本当にきれいな音程はチュ-ナ-では、計れません。
ハ-モニ-の音程とメロディーの時の音程は違いますし、曲の速さでも変わります。
こんなデリケートな音程問題ですが、解決はただひとつ!
よく聴いて、美しい音程を探して身に付けてください。

そうすると、曲のキャラクターもはっきり鮮明になりますし、ぴたっとはまると、楽器もよく響きます!
私もがんばりますので、皆様ぜひこの音程を素敵にされて、また聴かせてくださいね。

福井の美しい風景、美味しい空気、美味しい食べ物!
日常の中に、美しさのヒントがいっぱいあります。
ぜひ、ワクワクしながら、さらに歩んでいかれてくださいね。

心から応援しています!

ルドヴィート・カンタ(弦楽器/チェロ)

 今年のコンクールは、私にとってとても楽しい大会でした。
どの演奏も私はとても好きでしたし、皆さんの演奏にとても感動しました。

 私は、小学生たちの演奏にとても嬉しい驚きがありました。
初心者の小学2年生も整然とした演奏で、弓の動きも素晴らしく、もう一人の小学生も大人っぽく、音楽的で、音も良く、とても驚きました。

 ドヴォルジャークの協奏曲を2曲聴くことができましたが、どちらも素晴らしい演奏でした。
この曲はとても難しく、そう頻繁に演奏されるものではありません。

 また、ブルッフの素晴らしい協奏曲や、モーツァルトの素晴らしい協奏曲もありました。
改良点として、楽譜通りのテンポで演奏するよりは、もう少し時間を取ってもいいのではないかとも思いました。
しかし、これは本当に些細なことで、彼らは皆、技術を学んでいる子供たちですから。

 参加者全員がとても良い演奏をしていて、ベストを選ぶのが難しいほどでした。みなさん、素晴らしかったです!!!

 今後の活躍に期待します。

若林かをり(管楽器/フルート)

 暑いくらいの晴天に恵まれた「第9回さかい九頭竜音楽コンクール」第2日目の管楽器部門で、可能性とエネルギーに溢れる演奏を聴かせていただきました。
今回初めて審査をさせていただきましたが、ホールと周囲の環境が素晴らしいと思いました。
こんな素敵なホールで演奏ができる機会や、演奏会を聴ける環境というのは大変恵まれていると思います。

 大きなステージでの1回勝負の本番、またコンクールの独特の雰囲気の中で、いつも通りの演奏ができた方、うまく行かなかった方、中には、本番の緊張感を味方につけて、いつもより上手く演奏できた方…いろんな方がおられたと思います。
審査員として、本番の演奏のみ聴いて評価を出さなければなりませんが、惜しくも受賞に届かなかった方々のパフォーマンスからも、たくさんの可能性が秘められた音や音楽が聴こえてきました。
力を発揮できた方もそうでない方も、今回の本番が今後のステップアップにつながる機会であったことを願います。

 人前で音楽を奏でるということは、聴いている人に、自分が演奏する作品の魅力や楽器や音楽の魅力を、どんなふうに伝えたいか…を音によって表現する場だと思います。
そのために、技術を磨き、演奏解釈を勉強するというプロセスが必要になってきます。
今回受賞されたみなさんは、表現したいことが聴き手に伝わってきて、なおかつ、音楽を演奏する楽しさが音に出ていました。
良い耳とテクニックを持って、ご自身が理想とするパフォーマンスに向けて練習をされてきた結果だと思います。
また、選曲も、ご自身の持っている技術を活かせる適正なレベルの作品を選ばれていたように感じました。
難しい作品にチャレンジすることも大事ですが、自分のレベルに合わないような難しすぎる作品を選んでしまうと、演奏曲が自分の中で消化しきれず、楽譜に書かれた音符を演奏するのに精一杯となり、本番でどんな演奏をしたいかを考えるところまで辿り着けずに、本番を迎えなければならなくなってしまうでしょう。
(最悪の場合、練習するのも演奏するのも嫌になってしまうかもしれません…)
ぜひ、沢山のレパートリーを聴いて知って、その中から、今の自分に合った易しすぎず難しすぎない作品を選んでください。
また、練習するときは、自分のパートだけでなく、ピアノパートの研究も忘れないでください。
スコアを見て、曲全体はどんな音がするのか、自分とピアノはどんな風に絡み合っているのか、どんな風にアンサンブルをしたいか…ということを考えることで、見えてくること(…この部分がこうなっているなら、私はこんな風に演奏したいなぁ。と感じることなど)は沢山あると思います。
今回、審査をさせていただき、みなさんの演奏からフレッシュなパワーを沢山感じられたことは幸せでした。
エントリーしたみなさんがこれからますます、素敵な演奏活動を続けて行ってくださることを願っています。

豊永美恵(管楽器/クラリネット)

 参加者の皆さん、今後の成長を期待させてくれるような熱演をありがとうございました。
昨年から部門別に分かれた審査となり、より専門的な評価を求めて福井県内のみならず県外からの参加者もいらっしゃったと伺い、このコンクールが成長・発展している事をとても嬉しく思っています。
管楽器部門でも、木管金管問わず様々な楽器がエントリーして下さり、その演奏内容も非常にレベルが高いもので、驚きと皆さんの将来に希望を感じながら審査させていただきました。 
開催の困難な状況の中、このように素晴らしいコンクールを継続してくださっている関係者の皆様に御礼申し上げます。

 以下、私が楽譜と向き合う際に大切にしていることの一つをお話しします。
つい私達は楽譜に書いてある音を吹くことに必死になってしまいますが、その「音」には作曲家の「言葉」が込められています。
そして、人は言葉を使わなくても表情や空気といった“音の無い時間“でも想いを伝えることが出来ます。それが「休符」です。
言葉をより深く相手に伝えるために、音の無い時間はとても大切です。
音を切るニュアンス・休符の方向性はどこに向いているのか・発音のニュアンス、これらを多種多様な呼吸で表現し、文章の句読点を考えることが、管楽器奏者にとって最も大切な“ブレスコントロール“に繋がって来ると思います。 

 ぜひ皆さんも、音を出す練習だけでなく、音を出さない練習で作曲家のメッセージを受け取ってください。

高鍋 歩(打楽器)

 今回初めて審査をさせていただきました。
コロナ禍がまだ尾を引く中、開催に向けてご準備くださった関係者の皆様に御礼申し上げます。

 打楽器部門について、今年はマリンバ10名、スネアドラム2名の参加となりました。
非常にレベルの高い演奏が続き、採点が困難でした。
全員基礎がしっかりしており、力まず美しいタッチで演奏されていることが印象的でした。
打楽器に限らないかもしれませんが、普段はおそらく大音量で練習することができないため、小さな音の音色の使い分けは上手なのですが、大きな音になると急に表現が単調になり、また加減ができずにコントロールそのものが失われてしまう演奏になってしまうことが多いと感じました。
大きな音で演奏できる環境を獲得することは難しいかもしれませんが、どこかで「フォルテの音色を想定し、使い分ける練習」を取り入れてみてください。
練習していないことは本番でもできません。

 今後も皆さんが音楽と共に歩み、人生を豊かに過ごしていかれることを祈念しております。

加納三栄子(打楽器/マリンバ)

10月とは思えない暑さだった日。
ホールに到着すると、真っ青な空と太陽をバックに美しく輝く素敵な素敵なステンドグラスがお出迎えしてくれました。

コロナでまだまだ気を遣う事が多い中、第9回コンクールの開催おめでとうございます。
出演者の皆さま、素敵な演奏をありがとうございました。

今回、12名(マリンバ10名・スネア2名)の演奏を聴かせていただきました。
皆さまそれぞれが真摯に音楽に向き合っておられることが良く伝わってくる、気持ちの込もった演奏ばかりであっという間の素敵な時間を過ごさせていただきました。

ここ20年位でマリンバの音域は5オクターブが当たり前となり、技術的に難易度の高い曲も毎年のように新しく増えていますね。
長さ3メートル弱の鍵盤の前を左右に行ったり来たりするわけですが、マレットの運び、身体の使い方が上手な方が多いなと感心しておりました。
曲中、基本的に同じマレットで高音域・低音域を行ったり来たりするので、それぞれの音域の鳴らし方(タッチのスピードや和音のバランスなど)を良く聴いて研究してみると良いかもしれません。
そして、大きなホールで弾いてるつもりで音を一番後ろまで豊かに届けるイメージを持って練習するのも良いと思います。

あと私自身がマリンバを演奏する時に大切にしている事は、『歌う』という事です。
歌っているつもりでも、どうしても手先だけになりがちな楽器ですので実際声に出して歌ってみて、フレージングやブレスの深さ、息を吐くスピード、音程の感じ方などを確認してみたり、どんな色や形の音の粒を出したいのかをイメージします。
特にトレモロが続くところは、息のスピードや深さと同じようトレモロをすると、自然な流れができると思います。

人前で演奏する時は、どうしても緊張して身体もこわばって硬くなったりしてしまいますが、
自分の音楽をする、自分が音楽を楽しむという気持ちを常に忘れずにステージに立ってください。
これからも楽しんで音楽を続けていってくださいね。
またいつか演奏を聴かせていただける日を楽しみにしております!

最後になりましたが、コンクール開催に向けてご尽力くださいました、関係者の皆さまに感謝申し上げます。

小林史子(声楽/ソプラノ)

 さかい九頭竜音楽コンクールの第9回開催、おめでとうございます。
参加者の皆様の熱のこもった演奏を聴かせてきただくことができて、とても嬉しく思いました。

 今回は小学生、中学生、高校生の方々が、それぞれの年齢に相応しい選曲と歌い方を研究されていて、丁寧で完成度の高い演奏を披露してくださいました。

 「歌うこと」つまり声楽においては、身体そのものが楽器と言えます。
ですから、特に楽器としての体が成長期にある小学生や中学生の方々は、日々変化する声を注意深く大切に育てていかなくてはいけないと思います。

 また、身体がある程度落ち着いた高校生の方々は、これからの長い時間を見据えて、方向性を定める時期だと思います。声楽では勉強の方向性が、とても大切なのです。

 高音が歌いにくい、声量が伸びない等の問題は、今すぐに解決を求めるのでなく、少しずつ声を育てていってほしいと思います。

 今回、みなさんの演奏から感じたことですが、楽しく演奏できた方や、自分で納得できる演奏ができた方、そうでない方、それぞれだと思います。その全ての演奏者が、真摯に今の自分の声に向き合っていらっしゃったと思いました。

 ただ、演奏上の注意としてフレーズの表現に工夫が欲しいと思いました。
一音一音歌うのではなく、音をなるべく大きなかたまりで感じるということです。
そうすることで、さらに音楽のスケールが大きくなるのではないかと思います。

 あとは作品分析です。
楽譜をよく読み込み、詩を理解して、隅々まで分析して、どこをどのように表現するか、何を伝えたいのかを明確にすることも大切です。
そしてパフォーマンス。より良いパフォーマンスのために必要なのは、楽しむこと、夢中になれることだと思います。

これからも多くの体験を通し、沢山の作品と出会い、素晴らしい演奏を聴かせていただきたいと願っています。

藤田卓也(声楽/テノール)


 小学3年生から高校2年生までの8名の輝く歌を聴かせていただきました。感謝致します。
歌は身体が楽器であり、本番に向けた調整が大変難しいですね。
当日歌われた皆さんが、どれだけ自分の思い通りに歌えただろうと、それまでの準備や舞台上でのドラマについても、沢山想いを巡らせながら聴いていました。

完璧に準備ができていても、当日の過ごし方や、本番直前、本番中の気持ちなどで仕上がり具合が大きく変わってくるのが歌の特徴です。
おそらく、もっと上手く歌えたのに!と悔しい気持ちの方もいらっしゃるでしょう。
もし、そう思うことがあったら、それはレベルアップの大チャンスです。

 私は、本番は特に、また練習でもレッスンでも、上手くいかなかった原因を徹底的に分析することをお勧めします。
なぜならば、ほっといたらまた同じ道を歩むことになりかねないからです。
これは不思議なもので、異なる足取りを計画的に作らないと、なぜか同じ道に行ってしまうということはよくあります。
また、分析することによって、上手くいかなかったことをいつまでも悔やむばかりでなく、次々と希望を導き出せます。
その希望は、悔しい、という気持ちを未来の成功へのエネルギーにさえしてくれるのです。
そして後に克服した際に、あの上手くいかなかった経験があるからこそ今の自分がある、と全てを明るく受け留められるようにだってなれます。
あくまで、これは私のお勧めです。

 同じ曲であっても、演奏された時にもう同じ歌は2つとありません。
そして、明日の歌は今日ともう違う、来月にはもっと違う、来年、10年後、30年後、どんどん曲は変わっていきます。
常に、その時その時の自分と向き合うことになるからです。
「歌う」という行為は、自分自身の研究でもあり発見が沢山あります。
簡単ではないですが、それを楽しみながら、自分を知りながら、これからもずっと輝く歌を歌い続けて欲しいと思いました。